心ひとつに(受験へ向けて)

心ひとつになればどんな困難にも

 春が待ち遠しい時期、中学三年生にとっては進路を決める時です。学級の子どもたちは、昨年から自分の進路を具体的に考え、決めてきました。
 進路は学級の子どもの数だけあります。すべての子どもたちが、これから歩み始める進路決定に向けて最後のがんばりをしています。

みんなで作ったお守り

 受験を前にして、「お互いにお守りを作ろう。」という提案が学級の中ででてきました。短冊状の色紙にクラスメイトへの合格祈願を書き、それを空のフィルムケース(今はデジタルカメラが多くフィルムケースがなくなっています)に入れ、ボンドを付けて、蓋をしました。
 みんなが作ったフィルケースのお守りは大きな箱に入れ、その箱の中から一人ひとりがそのお守りを取り出すのです。それぞれの生徒が手にしたお守りはクラスメイトの誰が作ってくれたお守りなのかはわかりません。それでもみんな大切に持っていました。フィルムケースの蓋に穴を開け、キーフォルダーのようにして、かばんにつけたり、フィルムケースに色マジックで絵を書いたりして持っている生徒もいました。クラスの誰かが見守ってくれているという思いが生徒一人ひとりにあるように感じました。

みんな進路が決まっていく

 生徒全員が同じ日に試験があり、同じ日に発表があるわけではありません。入社試験・専門学校・私立高校入学試験と終え、発表がされていきます。この時期はすでに進路決定した生徒とこれから受験をする生徒が同じ教室で一緒に勉強しているのです。私は生徒達に「クラス全員の進路が決まるまで、全員が受験生だぞ。」と言い続けてきました。そして、最後の受験の日がやってきました。

駅での見送りで

 道には霜柱が立ち、吐く息が真っ白くなる寒い朝、これから受験に向かう生徒たちを見送るため、駅で生徒たちを待っていました。緊張した顔で生徒たちが集まってきました。「受験票は持った?」という私の言葉に「うん、ちゃんとお守りも持ったから。」と答える生徒たちでした。そんな会話をしていると、すでに進路が決まっているクラスの生徒たちが、何人も駅に来たのです。「今日は受験でないぞ。」と声をかけると「みんなを見送りにきた。」というのです。
 
 受験へいく仲間を見送る生徒たちが徐々に増えてきました。駅から五十分ほど離れている生徒も、息を切らせながら走ってきたのです。「途中まで親に車で送ってもらったけどそこからは走ってきた。間に合ってよかった。」とニコニコと白い息を吐きながら話すのです。
 受験生は電車に乗り込みました。空いている席に誰も座りませんでした。みんなドアのところから、見送りに来てくれた仲間に、手を振っているのです。お守りを手に持ちながら、手を振っている生徒もいました。見送っている生徒たちも、精一杯の声で「がんばれ!」と言いながら、電車が見えなくなるまで手を振っているのです。

 15歳の生徒たちにとっては、とても緊張し大きな壁のように感じていた受験ですが、この受験を通して生徒たちは大きく成長をしていきました。  

2019年08月19日