子どもの中の伝統つくり

後輩を待つ在校生

 新学期が始まります。入学式の準備が在校生によって行われます。私が以前、着任した学校でも、この光景はありました。在校生が体育館に集まり、学年・学級ごとに準備作業の分担をし、一斉に準備に取りかかります。在校生は、新入生を迎える気持ちも高まってきます。今まで後輩のいなかった学年では、その気持ちはより強いようです。
 体育館に紅白幕を張り、校門から昇降口にかけて、きれいな花がうえられたプランターを並べ、新入生が登校してくるところを一生懸命に掃いていました。
 作業しながらの話題は、新入生の話です。「何部に入るかな?」「うちの部には何人入部してくれるかな?」「○○君の妹が入学するよ。」「誰と一緒に登校するのかな?」など、いろいろな話をしています。その顔は、気持ちが高ぶっているようにさえ感じる、素晴らしい笑顔です。
 入学式のすべての準備が終え、在校生が体育館に集合し、自分たちで準備した入学式の会場を見渡しています。

黒板へメッセージを

 在校生は準備が終え、下校となったはずでしたが、数名の生徒が職員室に来たのです。そして、職員室にいる先生に「新入生の教室にメッセージを書いていいですか?」と相談しているのです。
 外がうす暗くなった頃、教室を回りました。誰もいない新入生の教室をのぞいて驚きました。教室の入り口には、折り紙を短冊に切り、リングを作り、それをつなぎ合わせたもので、飾り付けがしてあるのです。そして、教室に入ると、黒板いっぱいに新入生へのメッセージが、色チョークを使い、書かれてあるのです。学校に入学し、第一歩を踏み入れる教室を、在校生が何時間もかけてきれいに飾りつけしていたのです。

よき伝統は自然とつながっていく

 三月に卒業生を送り出しました。そのとき、一年生と二年生が卒業式の前日に、卒業生の教室の黒板いっぱいに、卒業祝いのメッセージを書いていたのです。学校生活最後の一日、その教室に入った瞬間、在校生が書いたメッセージを卒業生が目にしたのです。卒業生は、そのメッセージに返事を書き、卒業していきました。そして、四月。それぞれの学年が進級し、新三年生と新二年生が、黒板いっぱいに書いたメッセージで新入生を迎え入れたのです。
送り出す生徒たち、迎え入れる生徒たち、それぞれの思いが、黒板に書かれたメッセージの中にありました。

「していただいたこと」を「してかえしていく」

 子どもたちは、それぞれが自分の思いを持って行動しました。「していただいたこと」を「してかえして」いったのです。お世話になった先輩に、これから一緒に学校生活を送る後輩に、思いをメッセージで伝えていったのです。

よき伝統こそ、心を乗せて永遠と繋がっていきます。

2019年08月29日