子どもの感性

先生、今日は丸いね

 授業が終わり、帰りの会が始まるまでの間に、十五分間の掃除の時間があります。私の清掃担当場所には、三年生が来て、いつも一緒に掃除をしています。
 先日の掃除の時間のことです。生徒たちの様子がいつもと違いました。なかなか掃除に取りかかれずにいたのです。今までには、なかったことです。体育祭の練習の疲れや暑さのせいもあったのでしょう。その日の掃除の終わりの反省会で、自然と私の顔が険しくなっていたようでした。
 翌日の掃除の時間は、前日の私の表情を感じていたのでしょうか。みんなてきぱきと掃除をしていました。
 この日の掃除の反省会が終えたときです。三年生の女子が私のところに来て、「先生、今日は丸いね。」と、にこっと、しながら声をかけてくれました。「昨日はどうだったの?」と問い返すと「昨日は……、三角だったね。尖っていたよ。」と言うのです。
 子どもたちの感性と表現力に驚きました。
 気持ちが顔に出てしまったことに反省をしなければと思いながらも、子どもが教師の表情を敏感に感じ取ることに、怖さとすごさを感じました。
 言葉だけではなく、教師の行動や表情などが子どもたちに与える影響はとても大きいものなのです。
 彼女は、私が無意識に表情に出してしまったことを感じ取り、翌日、それを伝えてくれたのです。

そっとツバメの糞を

 私が毎朝、生徒昇降口を掃除していると、ある日、その昇降口付近に、新聞紙を敷いたダンボールが置かれるようになったのです。
 ツバメが巣を作り、糞を落とすと、昇降口が汚れると思ったのでしょう。ちょうどツバメの巣の下にそのダンボールは置かれてありました。それまでは、ツバメの糞が落ちていると、デッキブラシで落としていましたが、その日からは、ツバメの糞が落ちてもダンボールの上に落ち、床が汚れることがなくなりました。
 数日ごとに、そのダンボールに敷かれていた新聞紙が新しいものに換えられるようになりました。そっと誰かが換えていてくれたのです。

新聞紙の交換を彼女が

 「庁務員さんいますか。」と放課後、三年生の女子が職員室にきました。その生徒は掃除のとき、私に「先生、今日は丸いね。」と言った彼女でした。
 彼女は庁務員さんに新聞紙をもらおうとしていました。庁務員さんが「新聞紙をいつも何に使うの?」と聞くと、彼女は「ちょっと使うだけだから…」と答え、すぐに新聞紙をもらって職員室を出て行きました。
 気になって、そっと二階から昇降口を見ていると、彼女はツバメの糞が積もった新聞紙をダンボールから剥ぎ取り、新しい新聞紙を敷いていたのです。
 
 誰も見ていない場所で、そっと活動する姿に、心が動きます

 翌朝、昇降口を掃除している私は、いつもになく大きな声で生徒たちに「おはようございます」と声をかけていました。この日も「丸い」一日になりました。

2019年09月25日