環境は人を変える

環境は人を変える

 私の隣のクラスはいつも掃除が遅く、授業も落ち着きがありませんでした。担任もどう指導してよいのか戸惑っていたようでした。授業に落ち着きがないと、教室も汚れています。掃除の時間もなんとか楽をしようとする生徒が出ていました。

放課後の教室で

 ある日、帰りの会を終え、子どもたちが帰ったあと、教室で生徒のノートを見ていました。生徒が帰ったあとの教室はとても静かです。
 その静かな中で、机を動かす音が隣の教室から聞こえてきました。生徒はみな帰ったはずなのに教室から聞こえてきたのです。
 そっと教室を出て、廊下から隣の教室をのぞくと、担任が一人で生徒の机をきちっと並べていたのです。
 落ち着きがなく、ざわざわしていた教室だけに生徒が帰ったあとの教室も机が乱れていました。その乱れた机を、担任一人で整頓していたのです。
 若かった私は、「どうして教師がこんなことを…」「生徒にやらせるべきだろう!」とその姿を見ながら思っていました。
 その日から、隣のクラスの担任は毎日生徒が帰ったあと、教室の机を整頓していました。それでも、教室は落ち着きを取り戻せませんでした。

生徒はじっと見ていた

 ある日、隣のクラスの担任が出張でいませんでした。出張でいないはずなのに、隣の教室から机を動かす音が聞こえてきたのです。そっとその教室をのぞくと、二人の女子生徒がクラス全員の生徒の机を整頓していたのです。いつも担任がしていることと同じことをしていたのです。
 思わず「何をしているの?」と声を掛けると、二人の生徒は一瞬驚いた顔をして、「毎日、先生がしていることをしているだけ」とさらっと答えるのです。
 「どうして、担任が毎日していたってわかるの?」と尋ねると、「そんなのわかるよ。毎朝、登校してくれば、机がきちっと並んでいるんだもの。みんなわかっているよ。」と話してくれました。

生徒の姿に変化が

 それからは放課後に担任と二人の女子生徒の三人で机の整頓が始まりました。不思議なことに、その頃からクラスの落ち着きが出てきたのです。落ち着きがないから、教室が汚いのではなく、教室が汚かったから、落ち着けなかったように感じました。
 放課後の机の整頓を担任と一緒にする生徒も増えてきました。そして、自然と掃除の時間も、どのクラスより、よく行うクラスになりました。
 らずしも伝わるもの。語らないからこそ強く、深く伝わるものがあることを学ばせて頂きました。

 子どもたちは教師の、大人の姿をじっと見ているのです。そこに子どもたちの姿が見えなくとも、教師の、大人の心の奥まで子どもたちは見ているのです。
そして、その姿を本当に感じたとき、子どもたちは自然と行動を始めたのです。言葉ではなく、姿(行動)で子どもたちは動き出したのです。子は宝です。

2019年10月07日