卒業式の晩

別れと出会いの季節

企業でも学校でも、春は別れと出会いの季節です。特に学校では卒業式、そして、入学式と、生徒との別れと出会いが必ずある季節です。
中学3年生は1月下旬から2月中旬までの受験の期間を終えると、1・2年生とは別の日課で、卒業式までの間、さまざまな活動が行われなす。
卒業遠足や奉仕作業など一つひとつが中学校生活最後の思い出となっていきます。

卒業式の練習を

 卒業式の練習が始まります。入退場のしかたや卒業証書の受け方、式歌などの練習を本番にむけて数回にわたり行います。
 最初の練習では、ザワザワしていた子どもたちも、卒業式が近づくにつれ、練習のときから涙目になっている生徒もでてきました。何度も何度も練習をしてきました。そして、卒業式前日です。
「3年間で最後の行事だ。みんながこの場に揃う最後の日が卒業式。素晴らしい式を作り上げよう」と子どもたちに語りかけました。
 その場の空気がピーンと張りつめた感じでした。その空気の中を、子どもたちの気持ちが伝わってくる感覚がありました。

いざ、卒業式

 いよいよ卒業式です。できるだけ普段と変わらぬ気持ちで式に臨もうとしました。
子どもたちは素晴らしい卒業式を行いました。心配なことが多くあったのですが、子どもたちが泣きながら歌った式歌を聴いたとき、「やはり素晴らしい子どもたちだ」と実感しました。
予期せぬ訪問者

 その晩は、学年の職員で少しお酒を飲んでから帰宅しました。
 卒業式の感動が残ったまま、布団にもぐりました。しばらくすると、我が家の庭が騒々しいのです。
 パジャマ姿で玄関を開けると、そこには今日卒業した数名の生徒が立っているのです。自転車で隣町の私の家まで来たのです。しかも夜遅くに。
 「どうした?」と声をかけると、「みんなで集まったら、こうなっちゃった」と言うのです。
 彼らを家の中に入れて、話をすることにしました。
台所へ行き、冷蔵庫からジュースとビールを持ってきました。彼らにはもちろんジュース。私はパジャマ姿のまま、彼らの前でビールを飲みながら、いろいろと話しました。
彼らの話は単純でした。「卒業したら寂しくなって、みんなで話しているうちにここに来た」というのです。夜遅く我が家に来た理由は、ただそれだけだったのです。
それからしばらく、中学校生活の思い出話に花が咲きました。
短い時間でしたが、彼らは大声で笑ったり、冗談を言い合ったり、本当に楽しい時間でした。
気がつけば深夜です。家に着いたら電話を私に入れるようにと伝えながら彼らを見送りました。

 彼らが帰った後、ドキドキしていました。「気がついたら私のところへ来ていた」という彼らの言葉が嬉しくて、寝付けなかったのです。
ただ、それだけの理由で夜遅く自転車に乗って、隣町の我が家まで彼らは来たのです。     
(子は宝です)

2020年03月24日