子どもの感性

「にこにこ」と「にっこり」

 小学校で二年生の国語の授業研究がありました。もちろん授業には毎時間その授業のねらいがあり、そのねらいにむけて授業が進められています。
授業中に、突然女の子が「先生、ここに書いてある『にこにこ』と『にっこり』ってどこがちがうの?」と教科書を指差しながら先生に質問をしました。
教室の後ろにいた私もあわてて、辞書で調べてみましたが、そこには、「にこにこ」も「にっこり」も「声をださず、うれしそうに笑うようす」と書かれてありました。教室の後ろにあったもう一冊の辞書では「にこにこ…楽しそうにほほえみを浮かべるさま。にっこり…にこにこ」と書かれてありました。「にこにこ」も「にっこり」も同じなのです。

 私が教室の後ろでこうして辞書で調べていると、一人の女の子が手をあげ、「先生、にこにこは、いっぱい、にこにこするんだよ。にっこりは、にこっ、と短くするんだよ」というのです。

 それを聞いて、今度は男の子が前に出て、「こうだよ」といいながら、自分の顔で「にこにこ」と「にっこり」の違いをみんなに伝えるのです。

 その男の子が席にもどりかけたときです。「あっ!」と小さな声を出して、別の女の子が手を上げました。「先生、わかった!プレゼントをあげるときに『にっこり』するよ。プレゼントをもらうとき『にこにこ』するよ。そうだよね。」と、大きな声で、クラスのみんなに話しました。
その話を聞いたクラスの子どもたちは「そうだね。プレゼントをもらうときに、うれしくて『にこにこ』するよ。あげるときは、なんかわくわくして『にっこり』しながらあげるよね」と納得しているのです。

 この女の子の答えに驚きました。プレゼントをあげるときと、もらうときの違いが、「にっこり」と「にこにこ」の違いなのだという例に、私も納得をしました。

 どんな辞書よりも、多くの人を納得させるものでした。この回答に、クラスの子どもたちの表情はとても明るく、授業も充実したものになりました。

 大人が知識として知っていることを子どもたちに単に伝えていくだけでは、子どもたちはどれだけ理解し、納得するだろうかと気になるところです。
 子どもたちは日常の生活の中で、体験して身につけていくことがたくさんあります。文字だけでは納得できないものです。

 この授業の中で、教師が「さぁ、みんなで『にこにこ』と『にっこり』を辞書で調べてみましょう」と指示をしていたら、子どもたちはどのような反応をしたでしょうか?「なんだ、同じ意味なんだ。」で終わってしまったかもしれません。

 子どもたちは大人が想像もできないほどのすばらしい発想をいつも持っています。子どもたちの発想に感動で心が震えることがあります。

2019年08月04日